経理手続きの選択と経理(記帳)内容のレベル

経理手続の選択

経理等をどのように行なったら良いかといったご質問を受けることが良くあります。この場合、経理等の目的・意義を把握し判断基準を確認する必要があると思います。

経理目的

会社が経理(記帳)/決算書等を作成することは申告書等を提出する必要があるため、確かに強制的に作らされるものではあります。しかしながら、本来決算書の作成とは経営管理の原点だと思います。会社の損益を把握することは会社経営することにおいて絶対条件です。それも会社全体の損益だけではなく、どの支店、どの商品、どの地域が利益を出していて損失を出しているのか把握出来なければ、会社のコントロールは出来ないのは当然です。

損益の過去の状況把握が出来るようになったら、次に将来の損益も予測し実績と対比することにより経営のPLANDOSEEを行なう体制を確立することも必要です。また、資産・負債の状況の把握/対処を行い、これと損益を結びつけることにより、更に一歩進んで、単に利益の絶対額ではなく、資産の運用効率の視点から事業展開を行ってゆけます。

選択

会社の規模や業種によって、決算作業の簡略化や申告作業のメリットがあるということは、いっさいありません。会社として事業を営む以上、決算作業及び税務申告は不可欠です。ただし、そこにかけるコストについては一言で「費用対効果」で考えられるべきなのではないかと申し上げております。この費用は会計事務所等への支払いコストと社内人件費等で考えれば基本的に宜しいのでしょうが、効果については会社における以下の点により異なるのでしょう。

・事業規模 及び 事業損益(構造)の把握し易さ

・きっちりと記帳をしなくても事業規模が極めて小さければ現状の損益状況、財政状況は大体想像つかれることでしょう。しかし、プロジェクト単位の長期にかかる仕事や複数の商材、支店、店舗等を有している場合等については極めて小規模な会社であっても損益状況が把握することは困難でしょう。

・利益(キャッシュフロー)の安定度

・毎月の売上/原価/経費の発生額及び事業環境が不安定である場合においては、経営の判断を行なうための情報である会計データ等がない為に舵取りを緩慢にしていれば、その存続が危ういことになってしまいます。もし、利益率が高く儲かっているからと経営管理をいい加減にしていると業績が悪化した場合に取り返しがつきません。

・事業規模

・ある経営管理を行なうことにより、仮に経費の額が5%減少させることが出来るとするならば、事業規模が大きいほど、経費削減効果が大きくなります。よって、事業規模が大きければ大きいほど、経理等にもコストをかける必要性があります。

・横領等の発生余地

・余り気持ちの宜しい話ではないとは思いますが、現金売上の職種や財務担当と経理担当が一致している場合については、横領等の不祥事が発生しがちとなってしまいます。ちなみに横領等については、それを行ないたくなるような余地を与えている会社サイドに罪があるといった考え方もありますので気をつけましょう。

その他、対外上(金融機関、株主等)への適切な財務状況の公開等による与信上の問題等多々ありますが、SOHOの段階では最低限のクラス(当社の場合はAタイプ又はBタイプ)にしておいて、自分も含め総勢5人以上になった段階でDタイプ(パソコン会計)若しくはアウトソーシングによる対応が適切な場合が経験上多いとは思います。特にDタイプ(パソコン会計)Eタイプの場合においては、会計事務所等に対しては作業依頼といった位置付けより指導、コンサルティングといった位置付けでお付合いするのが良いのではないでしょうか。

経理(記帳)内容のレベル

会社にとって会計事務所と単に伝票をとりまとめて帳簿を作成する事後処理を行うといった関係だけではあまりにももったいないのではないでしょうか。以下に掲げる事項については、単に税務申告のために帳簿を作成することより手数やコストがかかることかもしれませんが、会社の経営を管理する上で最も大切なことなのです。

(a) 月次損益の平準化(節税対策に不可欠)

・発生主義

・発生主義というのは、入出金時に費用/収益を計上することではなく、発生時に計上を行うことです。例えば、商品代金の入金があった月に売上計上をするのではなく、お客様に商品を渡した月に計上するといったことです。こうすることによって計上された売上から費用等を引いて各月に幾ら黒字/赤字だったのかが分かるようになるのです。当然、こうした損益等をもとに損益の月次推移状況や累計損益が把握でき、今期の損益予測もより正しく判断ができるようになりますよね。

・減価償却費等の平準化(内容省略)

・毎月の在庫計上の洗替(内容省略)

(b) 仕訳に追加データを付加する。

会計データに付加価値をもたせる(例:売上や費用に部門/製品/プロジェクト/地域/人別のデータをつける、変動費/固定費のデータをもたせる等)。これにより会社の利益/損失がどういったことから生じているか分かります。また、資産/負債項目に部門別等のデータを持たせた場合は、単なる損益ではなく、資産/資金効率の観点からどの事業/部門に重点をおくべきか等を判断するための重要な情報を浮かび上がらすことも出来ます。

(c) 売上、費用に関するデータの内訳を随時とれるようにする。

例えば、月次損益である月が他月に比べて大きく赤字となっているので月次損益推移を見た結果、その月の車両費が多額であったとします。この際に仕訳に付加データを加えることにより車両費の内訳別(例:駐車場代、高速代、ガソリン代等)が直ぐに分かり、分析が容易になります。

d) 予算の作成及び予実対比の実行

過去の損益の実績値がきちんと把握し分析することが容易になって初めてより適切な予算額の決定や予算と月次損益の実績値との対比及び差額分析を行えます。こうした分析結果に基づいて把握された改善事項を速やかに実行することが重要なのです。

e) 債権管理を行う。

仕訳に売掛金、貸付金、買掛金、未払金等について相手先のデータを付加することによって、得意先からの未入金状況や仕入先への未払い状況が直ぐに分かるようになります。

(f) 月次試算表作成の迅速化

どんなに良いデータでも遅くては意味ないですよね。また、融資の時にも速やかに書類作成も出来ます。